誰が為の2.5次元か/PERSONA5 THE Stage

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これからの時代、「誰に向けた2.5次元化か」問題はどんどん複雑になっていくのではないでしょうか。黎明期は「キャラが生きてる〜!」「原作から飛び出してきたみたい!」と思わせることが最大の正解だったと思うんだけど、これだけ当たり前に2.5次元舞台があり、しかもオタクが観慣れるフェーズに入ると、もはや「原作を舞台の上にぺたっと貼りつけただけ」では評価されなくなるのではないか、などと考えたりするわけです。希望的観測含む。

俳優ファンなんて当たり前に目が肥えてるだろうし、作品が長期シリーズ化してるいま、二次オタでも2.5作品に複数触れたことがある人はフツーに多いはず。そういうオタクはそろそろ、舞台シリーズの「型」みたいなものをちゃんと理解し始めているのではないでしょうか。「型」っていうのは、「刀ミュは1部がミュージカルで2部がライブ」「ペダステは最後にヒメヒメ踊る」みたいなテンプレな。原作ではなく舞台シリーズの「型」を理解するって、何気に高度な観客スキルだと思うんだけども。

で、観客の理解が着実に進んでいるとすれば、「とにかく丁寧に原作をなぞる」っつー誠実さって、もしかして不要になるんじゃない?と思うわけです。確かに初観劇の二次オタにはその誠実は有効であろう。「わあ、原作通りだ!」という印象がプラスの評価につながるから。ただ、ある程度舞台を観慣れた客にとっては「ただ原作通りにやるだけ」の舞台ってつまんなくない?雑食にいろいろつまみ食いしてきた私なんかは「わざわざ観にきてんだから、原作再構築して舞台ならではの何かを観せてくれよ!」って思ってしまう。今後、観客の観劇経験が増えるにつれて「とにかく原作に忠実にやる」という価値が失われる未来もありうるな〜と思うわけです。

で、ペゴステ。これ、「とにかく原作をなぞる」パターンをド真ん中でいっているように見えました。つまり私はじゅうぶんに楽しみきれなかったんですね。原作を知らないとか、座席が3階(ケチって一般席)で遠かったとかの要素もあったんだけど、没入できなかった理由の大半はやっぱり「原作をなぞるだけの舞台に魅力を感じないから」かなあ〜〜〜〜〜〜。冒頭、どどん!とカジノの背景(アニメかな?見覚えあった)がフルスクリーンで出てきた瞬間、あっーーなるほどーーーー!そっちね!オッケー了解!と心構えしたよねw アクションシーンも、ペルソナの絵はゲームのCG借りてんのかな?まあとにかく、ご本家の映像をがんがん使いまくるタイプの演出に若干テンションが下がってしまったため、その後も没入感を感じきれずに終わってしまいました。なまじヒプステで広範囲の投影に耐えうる映像演出を観てしまったがために、スン…としてしまったよね…2.5ちょいちょい観てる人ならわかるっしょ!?映像使えばいいってもんじゃないよね!?w 二次元に近づけるための演出なのかもしれんけど、やっぱり三次元の奥行きを持ったキャストと二次元を融和させるのはとても難しい…ただ原作絵を映すだけの演出はコントと紙一重の際どい手法であることに早く気づいてくれ…

ぺごすての場合、忠実になぞるがゆえにところどころ野暮ったかったのも気になってしまいました。つーかペルソナが野暮じゃダメでしょうよ!!!むしろほかの何の要素を削ってでもオシャンティーに仕上げなきゃいけないはずの原作でしょうよ!!!!!!セリフひとつ取っても「いやそれは言わなくてもわかるよ!」みたいな余計なセリフが多かった印象。ゲームのシナリオをそのまま引っ張ってたりするのかな?なら納得なんだけど(キャラの動きが見えない→セリフで補完しなきゃいけないからね)。わりと口で説明するタイプの舞台でしたね。

アニメやゲームと同じテンポで進めようとしたがゆえ(たぶん)に、構成がいびつに見えたのもムムム…なポイントでした。いやー難しいよねわかる超わかる。だって素人目にも人気キャラは明智と喜多川なのに、このふたりは話進まなきゃ出てこないんでしょ…頭抱える気持ちは超わかるよ…冒頭の設定はきちんと原作通りに描きたい、人気キャラは出したい、しかし仲間が増える順番は変えられない、その結果としての、あの構成…!!!wwwいやそれにしたって、それにしたってですよ!喜多川くん、3時間の公演で出演時間のべ5分よ!?まじで!!!2フレーズ歌ったほかは1シーン(しかもセリフ2行くらい)よ!?カテコでも出番の少なさイジられてるらしいけど!w

なんかそういうとこも、原作を再構築することでうまいことできなかったのかな…と思っちゃうわけですよ。鴨志田のエピソードを1幕で片づけて、2幕で喜多川のエピソードやることは本当に不可能なのか!?という話ですよ!歌(幕間に原作ファンが戸惑っていた)とか「いやそれいらんやろ」みたいなシーン・セリフをがんがんカットしたら、もしかしたら可能になったんじゃないですか!!?!?!?てかなぜ歌わせた??????

カテコのあとにあの予告編をやるのはそれこそ野暮だと思う。次回作もう決まってるんだろうし、そこで喜多川くんが仲間になるんだろうけども、中途半端に顔見せするくらいなら出すなや…みたいなモヤッとがあるよね。今作を観た客はどうせ次回作も観るだろう、という傲慢が透ける。次回作のフラグがびんびんに立ってても、作品としてきれいにまとまってればポジティブに受け止めるのに、探偵団が全員揃ってない状態で「次回に続く!」やられると、「いや頑張って1作に収める努力はしようよ!!!!」とツッコみたくなる…し、頭を悩ませて努力した結果があの予告編だと思うと…なんか…そういうことじゃねえ…w

ついでにモヤッとポイント全部吐き出しちゃいますけども、ペルソナシリーズらしい深みがさらっと流れちゃったのも「あれっ?」だったな。「人間(大人)の悪しき欲望はオタカラである」とか、「我は汝、汝は我」とか、世界観のカギであり原作の本質でもあるであろう要素が掘り下げられていなかった。刀ステが「歴史を守るために戦う」という原作設定を膨らませ、再構築して壮大な物語を描いているように、深いところを抽出して再構成することは不可能ではなかったはず(トレスすべき筋書きがない刀剣はイチから作るしかないけど…)。それができていなかったのも、原作のテンポに忠実に作ろうとしたからじゃないかな、と推測します。3時間の公演ではゲーム3時間分の物語しか描けないのは当然ですな。鴨志田のエピソードだけではペルソナらしさを汲み切れなかった。

…とまあ自分でもマジかよって思うくらい無駄に不満を書いてしまっているのだが、当然ながら私がモヤッとしたというだけで、「なんだこの雑な作りは!!!」みたいなことじゃないです。キャストの話もしよう。猪野ちゃんはほんと器用!!!そしてヒデ様と高木俊さんはスゲー!あのくらいクドいほうが絶対いいよねこの世界観!!w ビビットな世界観とキャストのナチュラルな演技が釣り合わなくてドキドキするシーンもあるなか、ヒデ様と高木さんのクドさは最高にハマってたw モルガナちゃんは…ちょっと…審議ですね。いやかわいいけど、かわいいけど本気か冗談かわかんなくて戸惑うでしょ!w あのサイズ感で踊られるとつい見ちゃうからやめてほしい(しかもちゃんと踊れている)。

なんだろうなあ〜〜この感じ。決して怒ってるわけじゃないんだけど(私に怒るべき理由はないし)、モヤッとするな…みたいな。ただ私は部外者ではあるので、原作ファンの方が最高だった!と喜んでいるなら私の感想は無駄・蛇足・野暮でしかなく、私はお呼びでなかったのでしょう。制作側が手を抜いてるという印象もなく(むしろちゃんと誠実に作られてはいると思う)、ただ私が求める2.5とはちょっと違ったという話。誠実さの置きどころの違いかな。私は「原作に忠実」以外に誠実さをつぎ込んだP5が観たかった。

ところで私は次回作があったら行くのか?どうするんだ?喜多川くんはもっと観たいけど、この感じかあ〜と思うと悩ましいところです。