太陽の子がもたらすものとは何か/舞台「DECADANCE」~太陽の子~

チケットあるよーって誘ってもらって行ってきました。いまをときめく塩野先生、そして長妻、さらには去年合計で何回見たんやという猪野・小南がメインを張るという混線ぶりよ。座組みの段階ですでに趣き深かった。作品としてもおもしろかったです!

2.5いろいろ観てるわりに意外と西田演出には出会ったことがなく、唯一観たことあるのがよりによって『四谷怪談』というね。けど2作目にしてなんとなくわかってきたぞ西田演出!エモい感じの女性ボーカル曲に慟哭!ちかちか照明!そして暗転!みたいなやつや!!!照明づかい…というか、暗闇づかいが西田さんっぽさなのかな。何も見えない暗闇に灯るひかりを数える感じ。物語のかけらを拾い集める作品というのかな。演出だけじゃなくて物語も、一本筋のストーリーを辿るというより、そこここに散らばった感情や出来事をつなぎあわせると作品の輪郭が浮かび上がってくる、という印象を受けました。まあ親切なつくりではないよね、長いしねw 情報量が多いし、その散りばめかたは決して親切じゃないから結構疲れる。けど、かけらを集めることを楽しめる人は通いたくなるだろうし、2回目からは解像度もグンと上がるんだろうな。私が貧しくなければもう1回くらい行ってもよかった…長いけど…長いけどね…個人的にはせめて休憩込み3時間で収めてほしい。好きな言葉は「休憩なし2時間」です。吉谷さん大好き。

…つーわけでいろいろと着目すべきところはあるんだけど、簡単に。結局「太陽の子」とはなんだったのか、なぜ塩野先生(キャラ名覚えられねー!キャスト名で行くね!)が太陽の子だったのか、っていうところ。物語の舞台が中世っぽいことを考えると、塩野先生が「太陽の子」である所以はその性格ではなく、「星(太陽)を読める」からだったんだろうな、と観ながらぼんやり思ったのでした。もしかしたら天動説と地動説のはざまの物語なんじゃないかな、って。世界史に全然詳しくないからあくまでカンなんだけど…

星の移ろいや天災も神の意志だと考えられていた時代において、星=暦を読めるというのは神にも比類する才能なわけで。星が同じ周期で移ろっている(=神の管轄外である)などと考えもしない時代において、「皆既日食を予言する」なんてそれこそ人間業ではない。きっと塩野先生は、子どもの頃から星を見て「もうすぐ冬が終わる」とか予想していたのではないかな。もしかしたら、やさぐれるきっかけとなった「大きな発見」とは、それこそ「天が回っているのではなく、地(地球)が回っている」という事実の発見だったかもしれないなあ〜と思いました。超ifだけどね。神の時代から人間、科学の時代へ。子どもから大人へ。旧い時代から新しい時代へ。

そうすると、革命のもうひとりのキーマンであるアンナが祈りを否定するのもなんとなくわかる。神に祈らないということはつまり、神を信じないということだから。アンナの母、王妃が祈り続けていたのとは対照的。これもひとつの親殺しというか、旧い時代の克服といううっすらしたテーマがあるんじゃないかな〜。魔女狩りというモチーフも近代手前=神の時代の象徴であろうし。「ここが太陽の中心だ」が破滅の言葉だとすると、やっぱり人間中心主義というか、世界の中心が神から人に移った感があるように思います。

…とか言いつつ、革命軍?が「国家は神をモノとして扱いやがる」とか言ってた?からわからんけどね。革命が起きたあとはどんな国になるのだろう。長妻はなぜ「月の子」だったのだろう。もしかしたら「みんな幸せに暮らしました」とはいかないかもしれないな。

やーーっぱ1回じゃ拾いきれない伏線が多すぎる。正直結局いのちゃんさまはいったい何者?近衛兵団どういう立ち位置?王様なんなの???クーデターされることがわかってて玉座に座ってた的な????何????????っていう…2幕で仮装祭始まったあたりから全然わからんかった…w 一見散らかって見えがちなのも西田作品の特徴なのかなあ?ギリギリむかつかないラインに散らかりというか、緻密に組み立てたうえでわざとわかりやすくしてないんだろうなあって気がしますね。西田作品が好きな人はそういうとこが好きそう。私も嫌いじゃない…けど、もうちょっとわかりやすくてもよくない?とも思うw ふとした瞬間に「あれどういうことだったんだろう」って考えちゃいそうで悔しいな〜!

キャストの話もします。塩野先生〜!意外とタッパないんだね…!キャラクター的に主演感はあまりなかったものの、中の人のアツさが板の上に表れていて「おお…野心のある人だ…」という感じでよかったです。佇まいでキャラクターを表現するのがうまいのであろう。姿勢の悪さがイイってあんまりないよね(わざとだろうけども)。いやーしかしこの作品、塩野先生の印象が薄いというより、長妻(のキャラ)がオイしすぎる説ですよ。長妻よかったなあ。クール王子キャラまじで!?と思ったけど結構声低いし、殺陣に華があるし、塩野先生は頭で考えてキャラを作る俳優だろうので、逆に長妻の「野性のカンでやってます」感が際立っておりました。せっかくの長妻なら陽キャ役を観たかった感もありますが、それはまあいずれ。きっとどこかでまた出会うことでしょう。

いのちゃんは相変わらずの器用。ソツなくうまい。絶対2.5よりストレートプレイのほうがいいと思う!!!主演よりこのくらいの番手のほうが私は好きかも。誠治郎さんとの殺陣めっちゃ速くて興奮しました。そんで小南はもうね、ちゃんと演劇できてて私は胸熱ですよw 引き出しとしてはあんステDRの俺様ちゃんかな。セリフの抑揚や身振り手振りにDR(アホほど観た)の残滓があって、勝手に感動しました。このまま順調に上手くなっていきそうで楽しみ。なんとなく去年の文アル〜あんステDRの期間くらいが小南の俳優としてのターニングポイントだったんじゃないかなあって思ってるから、いつか答え合わせしてみたいな。

長妻と小南の縦に細長い陽キャコンビ、絶対かわいいからもっとSNSとかで見たい!!!!!怜央呼びかわいい。

 そんで田中良子さんはずるいよね。もう出てくるだけで泣いちゃうでしょ。賢志超〜かっこいい王様だったので余計に。チェスのシーン大好きだった!!!!!泣いちゃう。しばらく神父の萩野さんと見分けがついておらず(というか神父が賢志だと思っていた)、「2役やってるんだ〜」と思ったのは内緒です。