オタクは概念の話が大好き/脳内クラッシュ演劇「DRAMAtical Murder」

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BLゲーム(しかもニトロプラスキラルの)を中屋敷さんで舞台化マジかよ!けどまたステラボール!そして何かとカブってる年末!つって足踏みしていたのですが、中屋敷さんのテンションがヤバすぎるので、いったい何が起きているのかを知るために私は品川の奥地へ向かったのであった。↓なんなんだこのテンション。楽しそうだな。

ステージに中屋敷さん演出おなじみの斜めになった盆(としか言いようがない、あれ何て言うの?)が見えた瞬間、「これこれー!」みたいな安心感あったよね。はい、おもしろかったです。そりゃあおもしろいでしょうよ!「舞台化する」ってこういうことだよね!という2.5次元。板の上で世界観を顕現させ、物語をきっちり描き、キャラクターを受肉させ、客が期待しているシーンもしっかり入れる。こういう舞台が観たかった。

私が観たのは蓮というキャラをフィーチャーした公演。この作品、主人公の子がヒロインで、彼と誰がロマンスする(古い)かが回替わりなんですわな。蓮ルート、ちょっと難易度高かったですね!?ほかのキャラのほうがBL感あったんだろうな〜。

ネタバレてしまうと、蓮は主人公の犬型オールメイト(ペットみたいなロボット?)なんだけど、じつは蓮は主人公の頭のなかにいる暴力的なアザーサイドから善良な主人公を守るための意識そのもので、オールメイトに自分を投影させて主人公の側にいたんだけど、いろいろあって感情が生まれてしまった結果主人公に恋をして、でも蓮はもともと主人公の一部だし云々…ひとことでいうと難解だったw 自分と自分のラブストーリーというか、自分と自分の濡れ場(後述しますがきちんと?やってくださいました、すごい)というか…しかもそれらはすべて仮想空間で執り行われているみたいな…もうね、全部概念。概念の話よ。オタクが大得意な概念の話ですよ。最終的には転生(?)するし…古のオタクに優しい…この設定、いまの若い子に伝わんのかな…

ただドラマダの核を担う大きな謎が明らかになるのがこの蓮ルートだし(ほかのルートでもある程度明かされてんのかな?)、作品自体はやっぱり主人公・蒼葉の物語なのだろうから、蒼葉が「もうひとりの自分(蓮、悪蒼葉、そしてセイ)」と向き合う蓮ルートこそがドラマダの真髄なのでしょう。

1幕で状況説明・各キャラとの出会い・大きな事件が起きる→2幕で事件の解決とロマンス(という以外にどう表現するべきなのだろうか…)っていう構成だったんだけど、どこまでが共通ルートなんだろう?1幕までかな?

SFっぽい世界観で専門用語(?)もガンガンあるので原作知らないとついていくのがやっとだが、この「最低限知っているべきことは取り急ぎ爆速で説明する」という割り切りかた、私は好きだよ…!置いていかれそうなスピードとテンポに食らいついて、頭働かせながら観劇するのはとても楽しい。舞台ドラマダの優しさは、手取り足取りルビを振るように解説してくれる優しさではなくて、「このくらいの説明でもわかるよね?」と客に理解を委ねてくれる優しさなのではないでしょうか。私は後者のほうが好きです。前者はバカにされてるみたいで好きじゃない。

状況や世界観を口で説明するタイプの舞台なので、それが嫌な人もいるだろうな。私はアリ派です。モノローグで「観客に」語りかけるタイプだからあんまり気にならなかった。「俺は家を出てあいつの店に向かった」みたいなやつですね。状況説明をキャラ同士の会話でやられるとくっそサムいけど、モノローグならすんなり受け入れられた。

この作品を観てバカにされている!と感じるならば、その原因はモノローグ演出にあるのではないか。確かに異常に説明してくれる。でも裏を返せば、言葉で説明されるものは「それ以外の表現で見せる必要がないこと」であり、観客の想像力を借りたほうがいい部分は、ちゃんと視覚的に見せる演出がされていたように思います。その仕分けがとても的確だった。たとえば蓮の表現。蒼葉は犬のぬいぐるみに話しかけている、その返事は後ろに佇んでいるキャラクターから発せられる。その画だけでじゅうぶん「ああ、後ろの人が犬に憑依して喋ってんだな、何か事情があるんだろうな」と理解できるわけですよ。とくに蓮ルートは観客の想像力に委ねられる部分も大きく、こんなにコンパクトにまとめてきたという自体が「オタクならこういう説明とこういう表現でわかるよね?」という中屋敷さんからのメッセージなのではないかw

まあ確かに状況を理解するのが精いっぱいで感情が追いつかないこともあったけど、おそらく作品の最大のキモは「DRAMAtical Murderというボリューミーな物語をいかに舞台1作で成立させ、完結させるか(ついでにちゃんとBLもやる)」だと思うので、まずはきれいに収まっていることに感動したい。もっと長い時間かけて物語楽しみたいなら普通にゲームやればいいし。世界観やストーリーの骨格は原作ミリしらでもちゃんとわかりました。「えっ結局クリア何者なの」とか「あれミンクってなんなんだっけ?」みたいなとこは、そのキャラのルートを観ないとわからないんだろうな。でもそれは観客に対する不誠実ではない。私が観たのは蓮ルートだから、蓮の想いが表現されているだけでじゅうぶんだったわけです。関係性を深める=ルートに入ることで相手のパーソナリティーがわかる(つまり、ルートに入らなければ相手のパーソナリティーはわからない)、っていうのはきっとゲームの仕様と同じだな〜と思いました。個人的には紅雀さま推しです!!!女たらしのキザな髪結い!!!!!好きに決まっとろうが!!!!!!幼なじみロマンス見たかったな〜〜〜〜〜。少女漫画みたいになりそう〜〜〜。

つかなんでドラマダを舞台化することになったんだろうね…そもそもそこですよ。キラルのゲームやったことないけど、「内臓とか血とか出てくる」みたいなイメージ強いもん。刀剣乱舞(原作はニトロプラス)つながりの縁でしょうか。中屋敷さんに委ねたネルケは偉い。「えっ大丈夫!?いやでも中屋敷さんなら逆にアリ、アリだな!?」ってなるもんねw

で、実際どの程度BLだったかという話。しばらく「あっさすがにキャラ同士の距離近いんすね…」くらいでBL感はさほどなかったのに、途中で主人公が捕らえられて(以下略)のシーンを目の当たりにした瞬間「こっ、これがニトロプラスキラル原作BL舞台…!」と思わず固唾を飲んだね!コンテンポラリースタイリッシュR-18だった〜〜〜〜概念〜〜〜〜俺たちオタクは想像力が発達しているのでちゃんとR-18シーンに見えました〜〜〜〜すげえな〜〜〜〜〜!!!!!濡れ場はコンテンポラリーダンスな感じでオシャレに処理されていましたが、チューはガチで男子同士でかましてくれました。すげえ。瞳孔開いた。つまり蒼葉の永田くんは全公演かわるがわる違う男とキスをするということやな…ゴクリ…

というところからキャストの話に。いやーーーもうーーー永田くんマジで何!?逸材すぎるーかなりすげえ。BL云々ではなく、永田くんの謎のポテンシャルがなければこの舞台成立してないでしょ…ガンダム00の舞台でティエリア役を拝見してましたが、今回はまさに俺僕私を最大出力に振り切ったみたいな怪演でした。普段の自分と頭のなかにいる悪い自分のせめぎ合いで悶え苦しむシーンとか、ここは本多劇場か…?というヤバい熱量があった。お芝居うまいんだけど、うまいっつーか…なんだろ、謎のエネルギーがほとばしっている永田くんだから「BLやらせてごめんな…」的な後ろめたさもなく、「永田ァ!!!!!かましたれ!!!!」と拳を突き上げるように瞳孔かっ開いて応援しちゃったよね。セリフ量も当然やばいし5ルートあるし、並大抵の仕事量ではない。つって、21歳なの!?!?!?ヤバすぎる…ポテンシャルの塊やんけ…2.5次元の小劇場役者(概念)って感じの風格すら漂わせるパフォーマンスよ… 

中屋敷さんと脚本の方がだいぶノリノリだからっつーのも大きいだろうけど、キャストもおおむね楽しそうにやってるとこもなんかイイw 変にBLであることをごまかされると謎の気まずさがあるけど、「よっしゃ!ちゃんとBLしながら世界観作ったろ!」つって開き直りながらフラットに作られてて好印象です。ノイズよかったな…往年のオタクに受けるキャラクター造型すぎて昭和生まれのオタクはブルブル震えた。演技も声も素敵でした。君、これが初舞台なのか…!!!

 ついでに紅雀さまも貼っとこ♡ 劇シャイ以来の小波津くん、相変わらずギリシア彫刻のよう。

うむ。結論、とてもおもしろかったです。日程と予算に余裕があるならもっかい観たかったくらいだ〜〜。次の紅雀ルート公演、刀ステのチケット持ってる日で無念でした。「BLが苦手な人も観れる!」という言いかたはまったく不適切だが(真っ正面からとてもBLなので)、BL舞台観てみたい〜って人はじゅうぶん楽しめるかなと。

まーこんな作品が舞台化される機会はそうそうないと思うので、劇場に行ける人はぜひ行ってみてはいかがでしょうか。当然円盤化も予定なしだそうで(そりゃそうだ)。とはいえ私が憎しみ続けるステラボールですので、チケットが選べるなら20〜40番くらい(列問わず)を激しく推奨します!!!ちなみにステラでマチネ入るときの昼ごはんは品川駅構内の立ち食い寿司がおすすめだよ!!!!