B-PROJECT on STAGE 『OVER the WAVE!』REMiX@AiiA 2.5 Theater Tokyo

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観てきた。舞台から原作を知ったパターンの2.5次元です。初演は去年夏、銀河劇場での舞台・ZeppTokyo(ダイバーシティのほう)でのライブが行われた『B-PROJECT』(Bプロ)舞台版。と書くと何それ?って感じですが、文字通り「舞台の続きがライブ」ですごくうまい構成でした。Bプロメンバーはアイドルなんだけど、舞台のラストで「サマーライブが決まった!しかもZeppで2days!」っていうくだりがあって、その続きのテイで本当にライブをやってくれたんですね。
で、今回のREMiXは舞台とライブをひとつにまとめた形の再演。2時間の芝居を1時間半くらいにギュッとして、「ワンマンライブが決まった!」⇒10分休憩挟んですぐライブパート。この作品は細かいところで「気持ちいい」ツボを外さない演出が秀逸で、再演ではそこがパワーアップしてましたね。「かゆいところに手が届く」感。追加のシーンであかねの過去を入れたり、VSパフォーマンスのミックスの気持ち悪さがなくなってたり、どんどんストレスがない作品になってってる。

いやーーーーーーーーーーー、もうね、本当にいい舞台なんすよこれ。マジで。発表時からド炎上したりチケットがはけなかったりで完全にネガティブマーケティングから始まっちゃってたのが本当にもったいない(かくいう私も最初は完全に対岸の火事気分で観に行ったんだけども)。結果的には、その前評判の悪さもいいギャップとして受け止められるんだけどさぁw

物語の筋書きはとてもシンプルで、ご都合主義と言っても過言ではない。Bプロメンバーに大きな仕事が決まった→不慮の事故でその仕事に穴を開けてしまいそう→BプロメンバーのピンチはBプロメンバーの絆で乗り越える!めでたしめでたし!みたいな。これだけ書くと全然面白そうに見えないんだけど、「悪役(敗者)がいない」「トンデモな設定をディテールの細かさで補う」ことによって、没入感があり観やすく後味もよく、スッキリまとまった物語になっています。勝負ものじゃないから敗者がいない、悪いのは名前だけ出てくるオリジナルキャラ(初演「トム・クールズ」再演「ジョージ・ルカス」。このクソパロっぷりw)。だから後味がすごくカラッとしてて気持ちいい。

物語の大筋だけ取り出すと大味なのに、「外タレの急な来日でスケジュールが狂う」「大きな仕事にあまり名の知られていないグループが起用されたことで業界人に陰口を叩かれる」「あなたたち二人だけじゃキラキンですらないの!」などなど、なんか妙にリアリティのある設定と会話のおかげで不思議と物語に入り込めるのがすごいところだと思うんだよね(地味に双子ハリウッド映画に関する伏線の張りかたと回収のしかたもうまい)。これはいま『アンナチュラル』を見ても思うこと。大まかな筋書きがあまりにフィクションめいていても、そこに生きている人々の会話や思考がリアルであれば、私たちはじゅうぶん物語に没入できるんだなぁって。Bプロ舞台も気づいたらめちゃめちゃ感動してるのよ……最初はクソパロっぷりに一抹の不安がよぎるのに……w

もちろんその没入感はキャストの熱演あってのことではあるんだけど、Bプロ舞台はとにかく構成が最高。合間にパフォーマンスを挟むことで飽きないしダレない。初演のめちゃめちゃおもしろかったアドリブコーナー(アイドルのお仕事拝見!のテイでガチのバトミントン対決とか借り物競争をする)がないのは寂しいが、構成としてはすさまじくスッキリしていてよかったですねw この作品、公演時間がコンパクトなのも好きなんだよなー。どんなに面白い話も長いと疲れるので。

……で、いま思い出したんだけど、そもそもこれってオリジナルストーリーなんだよね。だからこそここまでスッキリまとまった話になったんだとも思う。話はそれますが、私は「原作に忠実であることを意識するあまり、2時間で描ききれなくてなんか中途半端に終わる」2.5次元作品がけっこう嫌いだ。とにかくオチのない舞台が嫌いだから、原作を改変してでもキレイなオチはつけてほしい。キャラのビジュアルとか、原作をキレイにトレースする展開とか、そういうディテールを突き詰めることで原作ファンは喜ぶかもしれない。でも2.5次元をもうちょっと外向きのエンタメにするためにも、「キャラが生きてた!」以上の「独立した1作品としておもしろいかどうか」という観点はあってほしいなぁって。2.5次元おもしれーなーって感じてるだけに、舞台がただのファンアイテムに終わるのはもったいない。

そういう観点からも、Bプロ舞台のカジュアルな青春ストーリーは最高でした。何も知らないままでも、観てるうちになんとなくキャラクターを把握できるシナリオだしね。2.5次元はこのくらいインスタントでカジュアルな物語のほうが好きだ(褒め言葉として)。ただただキラキラしている男の子を見たいから2.5次元舞台を観に行くんだもん。マック食いたくてマック食ってるんだよみたいな。ファストフード大好き。

しかもBプロ舞台はライブシーンと衣装も最高なのでありました。いやもう特に衣装よ。2.5次元最高峰の衣装でしょあれ。カーテンみたいな重いゴージャスな生地(金銀刺繍の入っている白!)で14キャラクター分ディテール違いのお揃い衣装があるって時点で最高なのわかるでしょ?

 

それで群舞してくれるからもう最高。視覚のカタルシスがハンパじゃない。セットリストも演出も振り付けも、ジャニーズをそれなりに知ってる身からしても「これー!」っていうドンピシャリのアイドル感で気持ちがいい。そもそもBプロは曲がいいってのも勝因のひとつ。キャストの生歌も緊張感があって悪くない。上手い子ばかりではないけれどもw

書きたいことは書いてしまったので(構成と衣装を褒めたかっただけだ!)キャラの話。推しは藤田富くん演じる愛染健十です♡ 「たぶんこいつが推しだろうな……」とミリしら状態で初演を観て、案の定推しでした。家庭にトラウマ持ちのプレイボーイ嫌いなわけないだろう!別に舞台ではそこまで描かれてないけど!これにより零様(あんスタ)の前科に加えて、「2.5次元化したらカリスマ読モがキャスティングされがちなキャラが好き」だという謎の方程式が生まれつつある。読モが……好きだ……基本的に男の趣味が……悪い……否定できない……。いやでもね、富の愛染すごく好きだよ。何がって、5億パー童貞じゃない男が愛染を演ってくれているところがいい!!!!!!!ほめてるよ!!!!!!!零様もそうだったんだよ……絶対に童貞じゃない小南が演ってくれた零様でよかったなって……。

THRIVEはなんせほかのふたりがゴリゴリに踊れるもんで、富ドンマイ!!状態なのだが(とある曲で愛染の大サビがごーちんに変わってるのウケる。B舞台は踊れる人・歌える人が前に出る潔さがある)、富はちゃんと頑張ってて応援したくなります。モデル経験者はちゃんとカッコつけられるからいいね。初演と比べてニコニコ踊ってることが多くて私は嬉しい。歌もダンスもたぶんちょっとうまくなってると思う!たぶんね!正直、再演で降板しちゃうかな~と思ってたのにまた愛染やってくれてありがとうな~。S級パラダイスの衣装、長身の富がターンすると舞うジャケットの裾が美しすぎてすべてを許した。スタイルのいい男の王子様丈は最高でしかないだろうが!富、走りかたがダサいところも愛染っぽくて好きだよ(解釈違いで疎まれかねない発言)!

 

 

ほかのキャストで言うと、遥日の滝澤くんのパフォーマンスがゴリゴリに進化していてお姉さんは驚きました。あの子マジで何者なんだ!w 異常にキレのあるダンス、魅惑の腰使い、甘~いセリフをまったく照れずにやり切る度胸、あまりに手厚いファンサ……どこを取ってもこいつぁ~大物やで!という感じで気になります。しかも演技もうまい。またどこかで出会いたい。

いやーーやっぱもっかい観たいなぁ。この作品じわじわくるんだよ……。初演のときも「いやこれもっかい観たいな!」つってチケット増やして、千秋楽の配信も買って、ここまで来たらライブも観なきゃじゃん!?つって平日の2days会社早退して通ったんですよ。何が私をここまでハマらせてるか全然わかんないんだけど、案の定再演もあと3回くらい観たい。私がアホなせいで東京楽のチケットを取り損ねたの本当に後悔している……ので明日あったら当日券チャレンジしようかな。明日が東京楽、来週末は神戸公演。「あーーーおもしろかった!アイドルかっこいい!かわいい!」って清々しい気持ちになれる2.5次元作品なので、関西在住の方はぜひご覧になっていただきたい。話がおもしろいのと衣装がいいのとわりとみんな顔がいいぞ!キラキラしてる男の子をおもしろい話で見たい欲は満たされると思います。あと何がいいって、チケットがめちゃめちゃ買えるぜ!!!!ファンとしては寂しいが、観客としてはふわ~っとコンビニでチケット買える環境は最高。また続編とかやってくれると嬉しいけど、難しいかな~どうかな。ともあれ、無事に大千秋楽まで終えられることを祈っています。明日の東京楽は満員御礼の客席を見せてあげられるかな(←という謎の視点が爆誕してしまった、B舞台ちゃんいい子なのにほっとけなさすぎて……)。

熱海殺人事件~1973初演版/9PROJECT@theater新宿スターフィールド

www.9-project.net

豊洲の土に還っているどさんこ先生から「これ観といたほうがいいよー」と言われ当日券で観ましたよ。ザ・小劇場!って感じで若干怯むも、日曜日真っ昼間の新宿二丁目の雰囲気ととても合っていておもしろかった。小劇場の客層こんなんなんだ!?って驚きもしたw つかファンなのかな?いかにも教養のありそうなおじさまおばさまが多めで、普段2.5次元などに足しげく通っている身からすると「私三十路なのに下から数えたほうが絶対早いやつ!!」みたいな。むしろ若輩者ベスト15くらいに入っていたのでは。演劇好きなおじさまおばさまってホンマにいるんやな…!

戸塚さん主演・カズキヨ演出の『熱海殺人事件』を観てからこの作品に妙にハマってしまい、それ以来なんだかんだ年1ペースで何かしらの『熱海』を観ている。が、今回のやつはつかこうへい氏の戯曲をそのまま起こした“初演版”。つかさんが自ら演出をする前の戯曲を板の上に起こしたということで、いわゆる“つか演出”はあんまりないんですね。白鳥の湖とか燕尾服とか(←こういうのがきっとつか演出の定番なんだよね?あんまりよくは知らないんですが)。

演出以外にも削ぎ落とされているものはとても多い。たとえば木村伝兵衛部長刑事と花ちゃんの関係とか、熊田刑事の縁談話とか、アイちゃんが整形して水商売をしていたとか、そういうけっこう重要っぽいのがことごとくない(ちなみに花束で金ちゃんを殴るのはアイちゃん。マジかよ)。そうして何が際立つかと言えば「金ちゃんの殺人を伝兵衛(たち)が立派に仕上げる」という話の本筋なのですね。ゆえにすごくシンプル! いかにこれまで私がド派手な演出に目くらましされてたかっちゅー話よ!w いや好きなのはド派手なほうなんですけど! 私は世界中のありとあらゆるけれん味を全面的に愛してるから!
話を戻して。前説でも語られていた、カミュ『異邦人』との関連。説明されるともはや『熱海』って『異邦人』のオマージュなのでは?とすら感じさせるものがある。まあ私『異邦人』読んでないんだけどね!
つまり「動機なき(不十分)殺人」は認められない、というのが『熱海』および『異邦人』の世界観で、伝兵衛たちはそれを知っているからなんとか金ちゃんを立派な犯人に育てようとする(美しい物語を仕立て上げる)。よくよく考えればハッとする話です。だって私、どんな『熱海』を観ても「金ちゃんはなんでアイちゃんを殺してしまったのかな」って考えてしまっていたから。
初演版の脚本にはその確固たる動機が描かれていないからこそ、観客や演出家たちは解釈によって動機を生み出そうとしたんだなぁ。たとえば「都会で変われたアイちゃんへの嫉妬」とか、「愛憎入り混じるがゆえ殺してしまった」とか、そういうの。
でもそもそも動機なんてなかったのでは? っていうのが初演版を観ての驚き……つーか、目からうろこな解釈でした。「太陽がまぶしかったから」という動機の殺人があるならば、アイちゃんがふと口にした「面倒なんよ」が直接的な引き金になることもあるだろう。それ以上でも以下でもない「動機」をあれこれ解釈してしまう私と週刊誌や新聞記者は等しく無慈悲・薄情な人間なのではないか、みたいなところ。はっとした。私は全然『熱海殺人事件』を理解していなかったかもしれない。

このあたりはパンフレットの演出・渡辺和徳氏の言葉に詳しいので引かせてもらいます。

 カミュは自作について、このように語っています。
 「母親の葬儀で涙を流さない人間は、すべてこの社会で死刑を宣告される恐れがある、という意味は、お芝居をしないと、彼が暮らす社会では、異邦人として扱われるより他はないということである」
 お芝居をすることでしか社会に受け入れられないということは、極論すれば、社会に気に入られなければ“存在しない”も同じである、ということになります。貧しい職工である大山金太郎の事件は、三行止まりの事件にすぎません。熱海=女工=腰ひもでは、世間には受け入れられないのです。それはすなわち、必死に生きようとしていた大山やアイ子の存在そのものが拒否されているということでもあります。

そんな金ちゃんを立派な存在に仕立て上げようとする伝兵衛刑事はさながらお父さんのようでした。でもそこから先は……というのが『熱海殺人事件』のまたおもしろいところなんだけど、結末の意味に関しては私もまだちょっとよく考えられてないから保留。

で、どさんこせんせも言っていた『熱海殺人事件』は演出家とか役者とかの話でもある、っていうやつ。

先の引用にも通ずるし、つまり「人生は舞台、人はみな役者」ということでもある。演じるように生きるべし、というのは人生を楽しく(または生きやすく)するためのライフハックだ。でもそれができない人はどうすればいいんだろう。大根役者が気楽に生きるにはまだ早い、というか、『熱海殺人事件』が書かれて何十年経ったいまも、大根役者の生きづらさは全然残ってるよなあ、などと思ったりしました。

つって、別にこの読み解きかたが100%正解というわけでもないのが『熱海』のおもしろさだよなーーー。誰にスポットライトを当てるか、どういう役者が演るかでテーマそのものが色を変えるのが『熱海』のおもしろさなのでしょう。戸塚さんが金ちゃんを演った『熱海』は貧富と美醜とアイデンティティ、美しい若手俳優で固めたNEW GENERATIONは若者の成長と美学、みたいな。中尾明慶くん(金ちゃん)と風間杜夫さん(伝兵衛刑事)の『熱海』はわりとまっすぐというか、爽やかな成長物語だった気がするし。個人的にはやっぱり戸塚版の「おめーが美男子だったからブスのアイちゃんは死んだんだよ!」みたいな「そ、それなー!」感が刺さりました。えーあれもう5年前…引く…

帰りに紀伊國屋寄ったらミカティさん&岡ちゃんの『熱海』がもう始まっていてビビった。こっちも観なければー!