舞台『刀剣乱舞』悲伝 結いの目の不如帰@明治座

※死ぬほどネタバレをしています!!!!!!!!!※

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み、観てきた。『刀ステ』シリーズの集大成とたびたび称されてきた『悲伝』、情報量がとにかくものすごい……これはもう絶対に予習(復習か)必須。いちおう全作観てはいるけれど、回数を重ねてきたわけじゃないから絶対直近で全部さらって観たほうがよかったなーーーという後悔がありました。

あと私はめちゃくちゃSFへの理解が浅い。「もしそうだったら」という世界構造、「いま、私がいるここ」とは世界線が違う世界への理解がなかなか難しくて、それはいままでファンタジーとかSFっぽいものに全然触れてこなかったからなんだよなあ。長編ドラえもんから始めるしかないのか……!

ちなみに私が知ってる「この手のフィクション」はハルヒエンドレスエイトうる星やつらビューティフルドリーマーくらいです。たぶん類似のフィクションは山ほどあるのだろう(それこそドラえもんとか)、でも私は全然それを知らないんだよなあ…というのがけっこうコンプレックスだったりする。

というわけで、事象をつなぎ合わせて組み立てる『刀ステ』の世界構造そのものへの理解はあまりできないまま、ただ情緒で観た感想を残しておく。そのへんの解釈・理解はその筋の考察班にお任せします!!!

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『悲伝』でキモとなるのは「三日月はいったい何を守ろうとしてきたか」。刀剣男士たちの守らなければいけないものが「(西暦2205年から翻った)歴史を守ること」だとすると、三日月の守りたかったものは、それよりもう少し卑近な「本丸の歴史」なのかな?と思ったのでした。

鵺ちゃん(時鳥)との会話でも言われていた通り、無限とも思える戦いのなかで結局歴史改変は行われていない=時間遡行軍の戦いは無駄なのでは?→それを阻止しようとする刀剣男士の戦いも無駄なのでは?(時間遡行軍がどんなに頑張っても歴史が変わらないなら、刀剣男士たちが戦う必要はないのでは?)という疑問が三日月のなかに生まれてしまったけれど、もしそれが本当だったら刀剣男士の戦いってめっちゃつらいと思うのです。彼らには心があるから。モノだったら「戦うために戦う」のが当然、でも心があれば「それって徒労じゃないの?」ということにも気づいてしまうだろうし、その猜疑心を抱えたまま戦うことは、それこそ「心が折れる」ことなのではないかな。

一方、不動くんや長谷部は、(たとえ大きな意味では徒労だとしても)戦う意味を見出した。修行を経て、「主を守る」という目的を見出せた。『悲伝』の彼らに迷いがないのは、「歴史を守る戦いって何だ?」という根本的な問いを上回る、自分だけの「答え」を見つけたからなのだろうなと思う。三日月はそれをみんなに見つけてほしかったんじゃないかなあ。

歴史の「結いの目」となってしまった三日月は、自身が本丸にいるというそれ自体で刀剣男士たちの戦いを無限化し、徒労化し、ゆくゆくは本丸自体を破滅に追いやってしまう。「終わりなき円環」のなかで、自身を留めたまま破滅という結末を阻止しようとしたことは何度もあったはず。でもやっぱり、人間たちの歴史が変わらなかったように、「三日月がいることで本丸が破滅する」という歴史も変わらなかったのだろう。それってあまりにも皮肉で残酷だ。そしていよいよ最後の手段として、三日月は「自分がいることで破滅する」→「自分が消えれば存続する」という選択肢を取ることになる。めっちゃ切ない。三日月宗近って何なんだ。『刀ステ』本丸にとっての三日月宗近はいったい何者なんだ……ただ美しいだけって……どう考えてもそれだけじゃねえだろ!!!

言うたら「俺が犠牲になればみんなを守れる」みたいなやつだよね。みんなはそれを望まなかったけど(「俺たちにできることはなかったのか?」)、でもそうするしかなかった。歴史は変えられないから。いやこの結論……普通かよ。でも『刀剣乱舞』という世界の仕組み的にはメッチャ根本的な話なのだ。無数にある本丸、けれどいまのところ、そのどれでも「時間遡行軍によって歴史が変えられてしまう」結末はない。まさしくない。だってあのゲームにバッドエンドはないから。撤退、敗北はあっても私たちは「歴史が実際変わった」ところを誰ひとりとして見ていない。こういう、何気ないゲームシステムを物語に落とし込めているのがスゲーーーーーな!!!と思った『刀ステ』だった……。『虚伝』のときにも思ったけど。まあ確かにレベリング周回とかしてるとすげえ虚無じゃん?そういう「何度も何度も同じ合戦場に出陣する」みたいなメタなところを、きっちり物語のなかに取り込んでいたのが本当にスゲェなぁおもしろいなぁと思ったのでした。

あの三日月さんが特異点(最近FGO始めました)であることはわかるんだけど、じゃあほかの本丸の三日月も同じ性質を持っているのか、あの個体の三日月宗近がたまたまそういう体質だったのか、またはこの本丸に顕現してしまう三日月宗近はみんな特異点になりうるのか、そこの解釈でラストシーンが希望にも絶望にもなるんだなァ。当然これは解決させることのない疑問なんだけど……。だってもし最後に顕現した三日月も「結いの目」であるとしたら、また同じことが繰り返されるのか……って絶望するじゃん? まあみんな三日月の記憶はあるみたいだから、今度こそみんな真の意味で強くなって阻止できるのかもしれないけど……でもなーー。あの最後の顕現がいったいどこの時間軸での顕現なのかわからないと、一概に希望とは言えない感があるよね……。

まあ結論としてはあの三日月宗近ってマジで何だったんだよ!!!!切ねぇな!!!!ってところと、「時間遡行軍の戦いも刀剣男士の戦いも無駄(かもしれない)」って世界の根底を覆しかねないクソ剣呑な気づきだなってところです!私はパンドラの箱をひっくり返したようなアッパーな地獄、アッパーな破滅が大好きなのだが、そういう意味で「全部無駄!!!!」っていう可能性がチラ見せされて興奮しましたね。「刀剣男士…みんな幸せになってくれ…」みたいな気持ちとは全然別のレイヤーで興奮しましたね。

うーん、やっぱりハラオチが足りない感じ。でもライブビューイングが遠い!!!!!7月末って!!!!!長期公演!!!!!!!キャストの皆さん、こんなハイカロリーな作品で長期公演めっちゃ大変だと思うけどマジで身体に気を付けて頑張ってな……!!!!以下、アホっぽい感想。

  • 今回の伏兵は完全に光忠。おっおまえ……『義伝』の伏線いま回収すんの!?!?!?!?!?!みたいな。正直ボロボロの光忠にはめちゃくちゃ興奮しました。「この戦いを終わらせるために強くならなきゃ」って、前述の「戦う意味」の揺らぎからしたらすごいセリフだ。
  • 当方長谷部推しですが、長谷部推しのクライマックスはやっぱ『ジョ伝』だったなと。死ぬほど泣いたね。極の甲冑と剣がダs…くてちょっと正気に戻ってしまったんだけど、「恨みはないが……死ね」は興奮しました。絶対殺すマンモードの長谷部が好き。
  • 大般若さんはBプロに出ていた子です!!!!!!!完璧!!!!!脚が長ぇし顔が似てるし声がミキシン。川上くん売れてくれ。
  • 前山先生の鶯丸は、我ら『あんステ』勢が前山先生の英智さんを見慣れすぎているのか、はたまた前山先生の英智さんがハマり役すぎたのか、だいたい英智さんだな?という瞬間が多々。でも鶯丸としては間違ってはない感じ。前山先生、セリフ回しがちょっと独特だよね。「、」の位置が独特。
  • オーカネヒラは、元気なバカが宇宙を救うって感じでよかったですねw演技や殺陣はその……あの手慣れのキャストのなかにいると「……がんばれ!!!」って感じだけど、技巧よりもまっすぐさが出ていてとてもキュート。中の人の加藤くんが推せる気しかしない。
  • まんばちゃんが歴史の渦にとらわれるところで、弁慶と義経とか新撰組とか、いままで『刀ステ』の出てきてない刀剣男士たちの存在を匂わせてくるところがうまいなーーーと思った。『刀剣乱舞』という世界そのものに思いを馳せるくだりでしたな。まんばちゃん、真剣必殺になった途端フードが取れて顔がめちゃかわいいから驚く。
  • 内番でまさかのマグロミュージカル。あの頃はまだその後光忠があんなことになるとは思いもしないのであった……。それにしても歌仙ちゃんの割烹着がかわいいし、光忠&大般若という長船派スーパーモデル体系の若者と同じシーンにいる歌仙ちゃんが昭和体型で愛おしい。そしてわだっくまはめちゃくちゃ顔がいい。

まだなんか書きたいことあった気もするけどタイムオーバー。気が向いたら追記します。