江戸は燃えているか@新橋演舞場

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※ラストシーンのネタバレをカジュアルに含みます!

急きょお誘いいただいて東銀座へ。全然関係ないけど寒すぎて引く。日本、快適な時期短すぎじゃないです?コートが全然しまえなくて困る。

で、『江戸は燃えているか』です。おもしろいって評判は聞いていたので行くきっかけができてよかった。三谷幸喜の舞台はなんとしんつよ『burst!~危険なふたり』以来2回目。『burst!』がかなり不条理というか、明るいコメディからどんどん雲行きが怪しくなっていって最後の最後でふっと底なしの穴に落とされる……みたいな作品で、あれは三谷作品のなかでも異色作だったんだろうな~と気軽な気持ちで行ったら痛い目を見ましたね!!
だって昨日の夜、なんとなく見た公式サイトの紹介文これよ?

出演は、三谷作品は大河ドラマ新選組』以来となる中村獅童、舞台『ロスト・イン・ヨンカーズ』(2013年10月)で三谷演出初参加の松岡昌宏は、三谷書き下ろし作品への出演は初となります。そして、昨年の大河ドラマ真田丸』に出演した松岡茉優藤本隆宏八木亜希子、初の三谷作品となる田中圭、高田聖子、磯山さやか飯尾和樹妃海風等バラエティに富んだ豪華キャストの面々が揃いました。

歴史をつくった偉い人たちと歴史に名を残さなかった庶民たちの可笑しくも愛おしい、江戸無血開城をめぐる群像喜劇を三谷幸喜が書き下ろす最新作、「江戸は燃えているか」、乞うご期待ください!
2018年3月、新橋演舞場史上、最も笑えるコメディが開幕します!

 

三谷幸喜コメント
ただただ笑える喜劇が観たい!難しい話は一切なしで、老若男女が心の底から(ああ楽しかった)と思える作品。ありそうでないんです、そういう舞台。だから自分で作ることにしました。題材は歴史に名高い「江戸城明け渡し」。主人公は、大河ドラマには絶対出て来ない、なっさけない勝海舟新橋演舞場史上、最高に笑える作品になるはず。どうぞお楽しみに。もちろん西郷どんも出ます。

いやジャンルは何かと言われれば間違いなくコメディ、確かに「新橋演舞場史上もっとも笑えるコメディ」「ただただ笑える喜劇」なのかもしれないけど!このテキスト読まずに行ってたらもうちょっと違う感想になったかもしれないんですけど!w

あらすじは、おそらく三谷作品の定番であろう「間違いの喜劇」。江戸城無血開城に向けて勝海舟西郷隆盛が会談をしようというところ、西郷と会うのは嫌だとゴネる勝海舟中村獅童)の代わりに庭師の平次(松兄ィ)を代役にして乗り切ろう!という、ウソから始まるドタバタコメディですね。
なんだけどこの作品、「これにて一件落着!」(という台詞が実際にある)のあと、最後の3分で「え!」っていうシーンが挟まって「え、え、えーーー!?」という感じで終わる(なんやかんやあって、無事代役を終えて?お駄賃をもらった平次が、痴情のもつれで刺され、身体を引きずりながら退場してEND)。「これにて一件落着!」で終わってたら純度の高いコメディなのになぜ刺したし!?っていうさ!!(笑) 言うたら97%は完全にコメディなのに、最後の3%で妙な後味の悪さが残るんですね。でも相対的に見たら97%はコメディだから、確かにひとことで表現するとちゃんと喜劇……み、三谷ーーー!!
舞台の三谷作品をあまり観たことがないけれど、この手の「ちょっとだけ喉に骨が刺さったような後味の悪さを残す」のが三谷さんの定番なのかなあ。それは予定調和へのちょっとした反抗だと言えるかもしれない。なんやかんやあったけどみんな幸せに暮らしました、が嫌いな人なのかもしれないなと思いました。テレビやらエッセーやらでひねくれ者なんだろうなというのはわかるのでwその点すごく腑に落ちる。誰もがすっきりするハッピーエンドなどない。確かにそうなんだろう……でも2.5次元の超予定調和に飼いならされてしまったハピエン好きの私としては「ハピエンで終わらせてよ!!!!!」という気持ちが強くあるw
2回3回観たら、この微妙~~~で微細な不条理への伏線も張られているのかもしれないな(というかまぁ、刺される理由そのものは1回観ただけでも全然理解できるんだけど)。いやこの手の裏切られ方って別に嫌いではないんだけど、やっぱ「ただただ笑える喜劇」かと言われると看板に偽りありだと思うわw それでも「おもしろかった」とキッパリ断言できるのがすごいところでもあるし。
オチ以外のところで言うと、キャラクターをあれだけ配置しながらドンズバで全員をきれいに動かして物語を練る、っていう構成がも~~~~~恐ろしいほどうまい。「何が起きるか」というより「誰が何をするか」が何重にも何重にも積み重なって物語になっている感じ。そしてそんなに熱心に三谷作品を見たことがない(テレビでもね)私でも、ちゃんと「ああ三谷作品の笑いだな」と実感できるテンポなのがすごい。今日もどっかんどっかんウケてたし実際私もめっちゃ笑った。獅童さんの冴えわたるアドリブが続いたあとにピンと張りつめたシーンになる、その切り替えもウワーッ芸達者なプロがつくるお芝居だー!という感じで感動。間とかテンポに個性がある舞台作品って本当におもしろいし本当にすごいよね。私はたくさんの登場人物がキチンと動いている群像劇が好きなのでたまらないものがありました。
役者さんで言うと松兄ィ~~めっちゃかっこいー!粋な江戸っ子似合いすぎ。三谷さんやっぱり宛て書きの天才なんだな……と感動するキャラクター。中村獅童さんも、登場した瞬間のキリッとその場の空気が引き締まるようなオーラがありますね。歌舞伎のトップスター、やっぱり瞬間瞬間のキマり方がすさまじい。女性陣もみんな気が強かったりチャキチャキしててかわいらしかった。高田聖子さん……好きです。新橋演舞場っつーことで「万屋!」「TOKIO!」の大向うが聞けたのも楽しかったな。あのシーンでかよ!というツッコミどころはありつつもw あ、田中圭くんも超かわいかったです。三谷作品はキャラクターがキレるシーンがとてもチャーミングだし、人間の俗っぽいところが表れてておもしろいと思う。
まーともかくドラマや映画で見る三谷作品と舞台の三谷作品はスパイスの効き具合に差があるように思えて、三谷担の間では「俺は舞台の三谷しか認めん」過激派とかいるのかな……とどうでもいいことを考えてしまった。なんせ私の三谷作品の記憶は大概がSMAP関連ゆえ、演劇畑の識者のご意見も聞きたいところです。なんやかんや言ったけどそれなりに予防線を張った状態で観る不条理は好きなほうなので、今度はもうちょっと構えて三谷作品観てみたい。

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追記。

平次がその後どうなったかは描かれない。けろっと傷を治してお伊勢参りに行ってほしい気持ちが強いものの、あえてあんな終盤で刺されたからにはころっと死んでしまうような気が…するんだよなあ…。

そんな平次は「江戸城無血開城という快挙の裏で流され忘れられてしまった不運な庶民」の象徴とも言えるし、「あの西郷隆盛に無礼を働いても打ち首を免れたのに、女のひと刺しで命を落としてしまった」ようにも見える。いずれにしろ皮肉が効いている、このシニカルさが三谷作品の肝なのかもしれませんな。Twitterでは「むしろ三谷作品ではここまでコメディに振った作品は珍しい」と教えていただいて納得。ならば確かにひたすら楽しい喜劇と言い切れるのであろう。完全にドラマの作風の先入観が……って、確かに古畑任三郎vsSMAPのラストも「う、うわ……」ってなるな!なるほどシニカルが作風!

全然関係ないけど、『burst!』のときのツイートも貼っておきます。